じゃがいもの合唱劇8

合唱劇 鹿踊りのはじまり

【2002年委嘱作品】

原作:宮沢賢治
作曲:林  光

演出:加藤 直
指揮:鈴木義孝

Staff * スタッフ

照明     安達 俊章
美術・小道具 安藤 淳
舞台監督   平野 礼子(劇団山形)

演出助手  鈴木 瞳
副指揮   郷津 幸男

照明:谷田貝浩行、高梨 航輔、
   時田 信明
音響:原田 和宗
舞台:亀井 泰樹

Orchestra * 楽士

クラリネット:南川  肇
ヴァイオリン:茂木 智子
パーカッション:星  律子
オルガン・鍵盤ハーモニカ:郷津由紀子

Cast * キャスト

嘉十:東海林 聡
鹿1:安藤  淳
鹿2:押切 謡子
鹿3:野崎  恵
鹿4:安藤 與宏
鹿5:西村 仁美
鹿6:渡邉 秀至

あらすじ

 「こいづば鹿さ呉でやべか。それ、鹿、来て喰」と嘉十はひとりごとのように言って、それをうめばちそうの白い花の下に置きました。それから荷物をまたしょって、ゆっくりゆっくり歩きだしました。
 ところが少し行ったとき、嘉十はさっきのやすんだところに、手拭を忘れて来たのに気がつきましたので、急いでまた引っ返しました。あのはんのきの黒い木立がじき近くに見えていて、そこまで戻るぐらい、なんの事でもないようでした。
 けれども嘉十はぴたりとたちどまってしまいました。
 それはたしかに鹿のけはいがしたのです。
 鹿が少くても五六疋、湿っぽいはなづらをずうっと延ばして、しずかに歩いているらしいのでした。

プログラムノート     林 光(作曲家)

 『鹿踊のはじまり』を書いてからでなくては死ねない、なんてはじめは冗談で、でもそのうち冗談で言うのはなにやら不謹慎に思えるようなトシになって、実のところまだまだ準備不足のような気がしながらもエイと決心してとりかかったのが、この作品である。
 1945年に出会い、1977年にはじめてその詩に曲をつけ、1986年にはじめてオペラを書いた宮沢賢治サンとのつきあい。1977年の『鼠たちの伝説』(佐藤信)からはじまった、呼び名はいろいろ変わるが〈合唱劇〉の経験。1970年にジャズシンガー安田南が歌った『センチメンタルジャーニー』いらいの加藤直との共同作業。そして1986年いらいの「じゃがいも」との日々。それらすべての流れがひとつに合流して、きょうの『鹿踊りのはじまり』はあるのだと思っている。
 「じゃがいも」にとってもことしは一つの転機であろう。ずっと「じゃがいも」の練習場で育ってきた二世たち。かんじんの一世団員たちよりも先に歌を覚えてしまっていたかれら。ここ数年はかれらのために子供組を組織して、そのための曲を挿入していたりしていたのが、いまやおとなの仲間入りをして合唱団の中核にせまろうとしている。かれらの本格的な参加によって、「じゃがいも」の音色は変わろうとさえしている。
 ところで、脱稿してから気がついたのだけれど、これまで「じゃがいも」のために書いた「かしわばやしの夜」「狼森と笊森、盗森」に、こんどの「鹿踊りのはじまり」を並べると、これはちょうど、『注文の多い料理店』から抜粋した素材による、イーハトーブ開拓史の三部作になるのだ。こんなことにいまごろ気がついた迂闊さと、気がつかなかったから果たしえたものかもしれない不思議とを天秤にかけて、はて、どう評価したものかと困っているところなのである。
 追 伸
 いまごろになって、たいへんなことに気がついた。
 賢治サンは書く。〈鹿踊りのほんたうの精神〉と。
 それは、民俗芸能「鹿踊り」の解説なのだろうか。それとも、民俗芸能「鹿踊り」にはない〈ほんたうの精 神〉のはなしなのだろうか。
(合唱団じゃがいも第29回定期演奏会プログラムから)

プログラムノート   加藤直(演出家)

 大分前、沖縄で「DOTA・BATA」という芝居を書き演出をした。ゴーゴリの「検察官」を下敷きにしたその名の通りドタバタ喜劇だが、ボクの意図は、沖縄の古い言葉であるウチナグチといわゆる標準語であるヤマトグチが馴れ合い騙し合い慰め合い時に取っ組み合いをする様子を描くことだった。
 ところで宮沢賢治だが、確かにヨイオハナシやココロアタタマルドウワを書いた側面もあることはあるが、読めば読む程複合的でその作品たちは随分と過激です。もしかしたらそこでは鹿や猫や森や草花が人間たちに聞かせたい話をしているのではないだろうか?賢治さんが人間も動物も植物も往々同じ言葉を喋らせているのに気を許してはいけない。騙されてはいけない。どの作品もポリフォニー(多声的)で多視的で、視点を変えると動物や植物が人間に襲いかかる寸前の境界的時空をシレッと書いているのかもしれない。
 林光さんと「合唱団じゃがいも」にお芝居を持ち込み、共同作業を始めて三十年近くになろうとしているが、今この稽古場で笑ったり泣いたり喚いたりする赤ん坊を片手であやしながら歌い演じる母親が、当時の稽古の最中に負けず劣らず大声で走りまわりダダをこねる赤ちゃんだったり子供だったのだから面白い。三世代から成るこの類い稀な集団が、言葉と音楽と声と身体という「現在」と「想像力」を鷲掴みにウタと取っ組み合う様子は、賢治さんの、時代をものともしない複合性と自由自在な世界がよく似合う。

公演詳細


【山形公演】
合唱劇「鹿踊りのはじまり」(2002年委嘱作品)

◆日時:2016年12月4日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:山形市民会館 大ホール
◆入場料:一般券 1,500円 / 学生券 700円 / 中学生以下無料

◆主催 : 合唱団じゃがいも、山形市、山形市民会館管理運営共同事業体
◆後援 : 山形県芸術文化協会、山形市芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆チケット取り扱い : 辻楽器店、富岡本店、山形プレイガイド


【東京公演】
◆日時:2017年1月29日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:かめありリリオホール
◆入場料:一般券 2,000円 / 高校生以下券 1,000円

◆チケット取り扱い所:林光事務所、
           かつしかシンフォニーヒルズ、かめありリリオホール

◆主催:合唱団じゃがいも
◆後援:山形県芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆企画・制作:林光事務所

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