合唱団じゃがいもの合唱劇 15

合唱劇 銀河鉄道の夜(委嘱初演)


原作  宮沢 賢治 「銀河鉄道の夜」
作曲  吉川 和夫 (2007.10)

《合唱団じゃがいも第12回委嘱作品》 芸術文化振興基金助成事業
・(財)山形県生涯学習文化財団YAMAGATAアートサポート事業
・(財)仙台市市民文化事業団助成事業

初演
  2007年10月20日 合唱団じゃがいも第34回定期演奏会
  ・山形公演(山形市中央公民館ホール)《2回公演》

  2008年1月27日 合唱団じゃがいも第34回定期演奏会
  ・仙台公演(仙台市青年文化センター・シアターホール)




 合唱団じゃがいもが、宮沢賢治作品の合唱劇化に取り組む中で、「いつかは上演したい。」と夢にまで見てきた作品。合唱団じゃがいもの合唱劇で初めての二幕構成による「一晩もの」。
 宮沢賢治の代表作であるが、長編作品であり、無数の入れ子細工のような物語であることから、どの部分を取り上げるのかで作品イメージは大きく違ってくる。
 吉川和夫さんによる「じゃがいも版銀河鉄道」は、原作に忠実に、それでいて東北人の「あたたかさ」を感じさせる、「ほんたうの幸」の追求譚となっており、楽しくも心地よい作品である。

Staff * スタッフ(2007年版)

演  出  山元 清多
指  揮  鈴木 義孝
台本構成  山元 清多・吉川 和夫
      東海林 聡・鈴木 義孝
照  明  安達 俊章
美  術  神保 亮

クラリネット  南川 肇
チェロ     山本 純
ピアノ     郷津 由紀子

舞台監督  森谷 文一

スライド操作  渡邉 秀至・東海林由貴

Cast * キャスト(2007年版)

ジョバンニ    鈴木 恵
カムパネルラ   安藤 江里和
先生       岡崎 充男
ザネリ      安藤 宏哲
活版所の主人   多田 敏之
活版所の工員   森谷 文一
ジョバンニの母  森谷 富美子
大学士      鈴木 俊明
鳥捕り      安藤 淳
車掌       阿部 洋
ただし      鈴木 烈
かおる子     森谷 智恵
青年       五十嵐 正拓
灯台看守     渡邉 秀至
信号手      塚本 万紀子
マルソ      森谷 美紀
カムパネルラの父 東海林 聡
語り       伊藤 由美・東海林 聡

合唱劇 銀河鉄道の夜(全二幕)

プロローグ・あまの川
1 午后の授業
2 活版所
3 家
4 ケンタウル祭の夜
5 天気輪の柱
6 銀河ステーション
7 北十字とプリオシン海岸
8 鳥を捕る人 9 ジョバンニの切符(前)
-休憩-
9 ジョバンニの切符(後)
エピローグ・あまの川

舞台評 「合唱団じゃがいも」の旅 

鈴木雅光(作曲家) 


 「銀河鉄道の夜」+「じゃがいも」+「吉川和夫」。この組み合わせを最初に見たとき、期待で体が熱くなった。宮澤賢治をテキストにつくられた音楽、映像作品は他にも多いが、「銀河鉄道の夜」だけは別・・・(そう簡単には手をつけられない)、という感覚を誰もが持つと思う。しかしこの人たちはいとも簡単に、そして自然に、この「とてつもないこと」をやってのけてしまった。上演時間約2時間。10月の山形での初演に続く仙台公演。この瞬間に立ち会うために、仙台だけでなく全国から聴衆が駆け付け会場は満席となった。
 「合唱団じゃがいも」は山形市を拠点に活動しているアマチュアの合唱団である。ただの合唱団ではない。1990年代から宮澤賢治の作品を中心に毎年合唱劇を委嘱し初演してきた。最大の魅力は団員構成。練習にくっついてきた団員の子供たちがいつの間にか一緒に歌いだして「子じゃが」(中には「孫じゃが」も)として今では合唱劇の中で重要な役割を果たしている。
 ステージは合唱隊をバックに手前で登場人物が演じる配置。オケピットにはピアノ、チェロ、クラリネット。後ろのスクリーンに時おり映し出される美術家の神保亮さんの絵が印象的。そして幻想的な照明が空間を演出する。ジョバンニ、カンパネルラをはじめ「子じゃが」から若い団員を中心に「親じゃが」たちが脇を固める配役。気負わない自然体の演技が聴衆を引き付ける。その姿勢は賢治が花巻農学校で生徒と自作の劇を上演したということを思い起こさせる。吉川和夫さんの音楽は賢治の言葉を優しく、わかりやすく伝えてくれる。賢治を知り尽くしている作曲家だからできる技。特にプロローグとエピローグに歌われる「あまの川」(賢治の初期の詩に吉川さんが作曲)は、わらべ唄のように素朴だが、この物語を一言で言いつくしているかのような存在感でいつまでも耳に残った。この日の聴衆の多くは家に戻ったとき、本棚に眠っている賢治の本をもう一度手にしたに違いない。
 演出の山本清多さん、作曲の吉川さんはじめ第一線で活躍する方々が「じゃがいも」の面白さの虜になっていて、一緒になって新しいものをつくりあげているという魅力的な関係が成り立っている。山形での定期公演に加え、昨年の東京公演、今回の仙台公演を成功させてきた「じゃがいも」の旅はまだまだ続く。次回は2008年12月20日、合唱劇「セロ弾きのゴーシュ」(林光作曲)。私は迷わず山形へ足を運ばせるであろう。

(Arsenアルセン(仙台市市民文化事業団情報誌)vol.58 2008年4月)