合唱団じゃがいもの合唱劇 14

音楽劇 革トランク・賢治の東京(委嘱初演)


原作  宮沢 賢治 
作曲  林  光 

《合唱団じゃがいも第11回委嘱作品》
 芸術文化振興基金助成事業

初演
  2006年11月4日 合唱団じゃがいも第33回定期演奏会
  ・山形公演(山形市中央公民館ホール)《2回公演》

  2007年1月21日 合唱団じゃがいも第33回定期演奏会
  ・東京公演(葛飾区かめありリリオホール)



Staff * スタッフ

原 作  宮澤 賢治
作 曲  林  光
演 出  加藤 直
照 明  安達 俊章
美 術  神保 亮

クラリネット  郷津 隆幸
バイオリン   中島 光之
ピアノ     郷津 由紀子

Cast * キャスト

斉藤平太、賢治、ゴーシュ  東海林 聡

楽長            鈴木 恵
              森谷 美紀
              森谷 智恵
              安藤 江里和

トシ            郷津 香乃

バナナン大将        子じゃがたち
特務曹長          鈴木 裕美
曹長            鈴木 俊明
兵卒            森谷 文一
              阿部 洋
              森谷 富美子
              牧野 節
              多田 敏之
              東海林 由美子
              鈴木 瞳
              佐藤 啓一
              大江 晴美
              塚本 万紀子

音楽劇 革トランク・賢治の東京(委嘱作品)

1 東京へ

2 東京        東京行進曲+丘を越えて

3 セロ弾きのゴーシュ オペラ「セロ弾きのゴーシュ」第1場

4 春と修羅      わたくしという現象は(「春と修羅」序による)

5 妹 トシ      鳥のように栗鼠のように(「無声慟哭」の「松の針」による)

6 オッペルと象

7 オペレッタ     恋はやさし野辺の花よ
            コミック・オペレッタ「飢餓陣営」
             1 兵士たちの歌
             2 将軍
             3 眠る大将
             4 大将と特務曹長の対話
             5 食事
             6 後悔
             7 祈り
             8 生産体操
             9 バナナン軍進軍歌

7 革トランク     若い柏の木と柏の木大王の歌(音楽劇「かしわばやしの夜」から)

前口上     

林  光 


 今年のステージは、賢治の体験をもとに、ウソとホントのまざった、「ケンジの東京日記」です。セロを習いに行ったつもりが、そこはオペラ「セロ弾きのゴーシュ」の舞台だったり、浅草オペラにでかけたら、花巻で上演するはずの農学校オペレッタだったり。
 時間が折り重なって、ふしぎな世界が出現します。
 ついに、“子じゃが”ならぬ“孫じゃが”まで登場する「じゃがいも」の一夜を、どうかお楽しみください。

(第33回定期演奏会パンフレットより)


林光さんと「じゃがいも」    

加藤 直 


 どうやらこの現代は 巨大な流通システムを使って 人々を人々のそれぞれの営為を 単純でわかり易い一個一個にしてしまおうとするらしい。個別的な顔つきや各々の欲望の違いをさておき 分類し管理し易い区分にわけようとしているようだ。表現や音楽や劇場でさえご多聞にもれない。ご用心!
 ところで わが合唱団「じゃがいも」だが これ程無頓着に無意識的に そうした「時代の流れ」に自由な集団を 見たことがない。 爽快なまでにアナーキーだ。清々するくらい勝手だ。その一人一人が合唱するのだから あきれる。が 聞くほどに元来世界はこうあるといいのにと思わず手を叩いてしまうように多声的なのだから 面白い。
 光さんの曲に、ある面「じゃがいも」はよく似合う。言い方を変えると「じゃがいも」が歌うと光さんの「うた」が思わぬ方向に飛び跳ねることがある。いやいや林光さんだ。そもそも「うた」をそう企んで作ったのに違いないのだが。無手勝流は恐ろしい。羨ましい。
 今年の稽古場にも「子じゃが」たちが走りまわっている。ついに「孫じゃが」も。実に三世代が参加する訳だが、こんなに大らかに自由に「うた」と付き合う合唱団がどこにあります? ここまでくると「前衛的」であるとさえ言える。
 彼らが、林光さんの「うた」を携え東京で公演する意味は、とても大きいのだが。

(第33回定期演奏会パンフレットより)



革トランク・賢治の東京について     

林  光 


 「じゃがいも」とは、「かしわばやしの夜」や「鹿踊りのはじまり」 をはじめ、宮澤賢治を下敷きに、いくつもの音楽劇を一緒につくって来たが、今回は思いきり空想の羽をひろげてみた。
 賢治が二度東京へ遊学したのはほんとうだが、この音楽劇では、賢治が交響楽団の練習を見学に行くと、そこではアノ物語(「セロ弾きのゴーシュ」)に出てくる「金犀音楽団」が猛練習中で、ゴーシュが楽長にどなられている、といったパラドクスが次から次へと起こるのだ。

(第33回定期演奏会東京公演パンフレットより)



産地直送、山形の「じゃがいも」は美味なり!     

音楽評論家  池田 逸子 


 山形の「合唱団じゃがいも」は1974年創立。当初はもっぱらルネサンスの合唱曲を歌い、その合間に日本の作品も歌っていた。転機は林光の「原爆小景」に田中信昭指揮で取り組んだ1983年に訪れる。そして3年後に同じ曲を今度は作曲家の指揮で歌って決定的となった。田中指揮で柴田南雄のシアターピースを、林指揮で彼の合唱劇(加藤直演出)をつぎつぎと上演していくうちに、その面白さにすっかりハマり、ついには林光と萩京子に一年交替で(最近は吉川和夫も加えて)合唱劇を委嘱し、初演し続けて、今日に至っている。  私が彼らの演奏会を初めて聴いたのは1988年7月の第15回定演で、林光の「コメディア・インサラータ」と合唱劇「鼠たちの伝説」だった。指揮とピアノは林光。演出は加藤直。何と贅沢なことをやっているんだろう、この人たちは!と驚いたが、ひとりひとりの歌う喜びが生き生きと伝わってくる彼らの声を聴いて、すべて納得。以来、18年。親の練習に付いてきて、見よう見まねで歌っていた“子じゃが”たちも、いまでは頼りになる団員だ。  東京公演の演目は、彼らがここ10年余り委嘱し続け、こだわってきた宮澤賢治が題材である。産地直送、味わい深い山形の「じゃがいも」を賞味するチャンスだ。

(第33回定期演奏会パンフレットより)