じゃがいもの合唱劇20

合唱劇 北守将軍と三人兄弟の医者

【合唱劇版初演】
 
原作    宮沢 賢治
作曲    萩 京子
演出    恵川 智美
指揮    鈴木 義孝
 

Staff * スタッフ

照明    安達 俊章
美術    安藤 淳
舞台監督  平野 礼子(劇団山形)
 
演出助手  鈴木 瞳
副指揮   郷津 幸男
 
照明    庄司 大也、長岡 竜也、
      時田 信明
音響    原田 和宗、高梨 航輔
舞台    亀井 泰樹
 
協力   オペラシアターこんにゃく座
     山形県立山形北高等学校音楽科
     安藤 純子
     渡邉 明美
 

Orchestra * 楽士

リコーダー     押切 歌音
          鈴木 優衣
ピアニカ      山本 純
          郷津 由紀子
アコーディオン   阿部 寛子
コントラバス    助川 龍
パーカッション   郷津 幸男
          五十嵐 香乃
          渡邉 茉奈
 
 

Cast * キャスト

北守将軍      鈴木 裕美
軍師の長      渡邉 秀至
王様        岡崎 充男
大臣        阿部 洋
大工        古澤 良彦
リンパー      鈴木 俊明
リンパーの娘    鈴木 恵
リンパーの弟子   鈴木 瞳 ・ 阿部 寛子
リンプー      五十嵐 正拓
リンプーの弟子   渡邉 蒼生 ・ 押切 謡子 ・ 押切 歌音
リンポー      安藤 與宏
リンポーの弟子   鈴木 研子 ・ 森谷 智恵 ・ 渡邉 さや
          川崎 由佳 ・ 古澤 優芽 ・ 鈴木 優衣

あらすじ

 むかしラユーという首都に、兄弟三人の医者がいた。いちばん上のリンパーは普通の人の医者だった。その弟のリンプーは馬や羊の医者だった。いちばん末のリンポーは草だの木だのの医者だった。そして兄弟三人は、青い瓦の病院を三つならべて建てていた。
 さて三人は三人とも、実に医術もよくできてまた仁心も相当あって、もはや名医の類であつたのだが、まだいい機会がなかったために別に位もなかったし、遠くへ名前も聞えなかった。ところがとうとうある日のこと、ふしぎなことが起ってきた。
 北守将軍ソンバーユーが9万の軍勢を連れて30年ぶりに戻って来たのだ。
 

〈オペラのはじまり〉を思い描いて
『北守将軍と三人兄弟の医者』について     萩 京子(作曲家)

 『北守将軍と三人兄弟の医者』は、1992年5月にオペラシアターこんにゃく座によって初演されました。会場は東京渋谷のジァンジァンで、「宮澤賢治歌劇場」と題して『猫の事務所』と2本立てで上演しました。
 
 私が『北守』でやりたかったことは、歌い手と演奏者が役割分担をしないオペラです。すべての歌い手が何らかの楽器を奏でながら歌い演じる、というオペラをめざしました。打楽器、アコーディオン、鍵盤ハーモニカ、リコーダーなど比較的簡易な楽器ではありますが、出演者全員が演奏しながら歌う、それがオペラのはじまりなのではないか?という仮説をたてて、イメージしてみたわけです。
 
 賢治の原文をそのまま作曲しオペラにする、というおもしろさに取りつかれ、賢治のことばと格闘し戯れているうちに、いろいろな音楽のかたちが現れて来ました。ことばが音楽を呼び起こす、そういう感覚を持ちました。
 
 歌い手が演奏しながら歌う、ということにこだわった作品なので、なかなかこんにゃく座以外の集団が上演することは考えにくかったのですが、ついに今回、合唱団じゃがいもによって『北守』が上演されることになり、作曲者としてたいへんうれしいです。
 
 じゃがいものメンバーの多種多彩さもたいしたもので、以前は「子じゃが」だった人たちが、今やじゃがいもの屋台骨を支えるようになってきていることも、ほんとうにすばらしいことです。
 また今回はコントラバスの助川龍さんに特別参加していただけることになりました。
 近年、いよいよパワフルになってきた合唱団じゃがいもによるスペシャルな『北守』。
 期待しています。
 

不思議な話     恵川智美(演出家)

 賢治の童話は、不思議な話ばかりです。時間も空間も自由自在、宇宙に飛び出したり、雪や森や水の中深くもぐったり。中でも、この二作品『北守将軍と三人兄弟の医者』『オツベルと象』は日本を飛び出し、私たちをまだ見ぬ外国の奇妙な町に連れていってくれました。  
 『北守将軍…』には、西北の涯て、乾いた砂漠の砂混じりの風やどこまでも真っ直ぐな大地を感じます。『オツベル…』では、暑い太陽の下、陽気に働く人たちの笑い声が聞こえるようです。一度も行ったことのない国々を、インターネットなどなかった時代に、賢治はどうしてこんなに生き生きと描けるのか、これまたとっても不思議です。
 さて、この外国とおぼしき町で奇妙な出来事が起こります。
 『北守…』では、30年も北の大地に行ったきりだった北守将軍の軍隊がボロボロになって戻って来ます。将軍のお尻は鞍にくっついて離れず、奇妙な草が将軍や兵士たちに生えています。
 『オツベル…』では、一匹の白象が最新式の稲こき機を導引して経済効果を上げているオツベルの工場に遊びに来て、そのまま働くことになります。
 二つの話はそれぞれ奇想天外な展開を経て大団円へと向かうのですが、話を聞いているうちに不思議な気持ちになってきます。可笑しくて笑っちゃう話なのに、ふと、哀しくなるのです。残酷な場面なのに、クスッと笑っちゃいます。何でだろう、不思議です。
 
 そんな物語に、二人の素敵な作曲家が音楽をくれました。打楽器が印象的なリズムを刻む曲と、とっても陽気で遊び心満載の曲です。二つの話は音楽と出会い、さらに膨らみ、縦横無尽に動き出しました。楽しく、愉快に、哀しく、残酷で、ユーモアたっぷりに!
 
 そして、それをジャガイモたちが演奏すると…あら不思議、賢治の愛した市井の人々の声が聴こえてきました。
 「おや、君、川へはいっちゃいけないったら。」って…。
 
 

公演詳細 

【山形公演】

合唱劇「オツベルと象」<管弦楽版>(合唱オペラ初演)
 
◆日時:2015年11月29日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:山形市民会館 大ホール
◆入場料:一般券 1,500円 / 学生券 1,000円 / 中学生以下無料
 
◆主催 : 合唱団じゃがいも、山形市、山形市民会館管理運営共同事業体
◆後援 : 山形県芸術文化協会、山形市芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆チケット取り扱い : 辻楽器店、富岡本店、山形プレイガイド

【東京公演】

◆日時:2016年1月31日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:かめありリリオホール
◆入場料:一般 2,000円  学生・高校生 1,000円
 
◆チケット取り扱い所:林光事務所、かつしかシンフォニーヒルズ、かめありリリオホール
 
◆主催:合唱団じゃがいも
◆後援:山形県芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆企画・制作:林光事務所
 
合唱劇「オツベルと象」 特設ページはこちら
 
 

フォトギャラリー【山形公演】

 
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(撮影・編集:鈴木 康弘)