じゃがいもの合唱劇23

合唱オペラ ねこのくにのおきゃくさま

【合唱オペラ版初演】
 
原作    シビル・ウェッタシンハ
訳     松岡 享子
台本    福田 善之
作曲    林  光
 
演出    恵川 智美
指揮    鈴木 義孝
 

Staff * スタッフ

振付    伊藤 多恵
照明    安達 俊章
舞台監督  平野 礼子(劇団山形)
 
美術・小道具 安藤 淳
 
演出助手   鈴木 瞳
 
照明:庄司 大也、時田 信明
   長岡 竜也、高梨 航輔、
   
美術・小道具助手 安藤 純子
 
 

Orchestra * 楽士

ピアノ 郷津 由紀子(山形公演)
    服部 真理子(東京公演)
 
 

Cast * キャスト 

王 様     鈴木 俊明
王 女     鈴木 瞳
王 子     古澤 優芽
大 臣     阿部 洋
大臣の息子・
王子のともだち 冨岡 和起 
家 臣     五十嵐正拓
 
旅人 兄    鈴木 烈
旅人 妹    野崎 恵
 

あらすじ

うみをこえたはるかかなたに、ねこのくにがありました。
ねこのくにのひとたちは、みなはたらきものでした。
たべるものも、きるものも、そのほか、くらしにひつようなものは、ぜんぶ、じぶんたちのてでつくりました。
こうして、なにふじゆうないくらしをしていましたが、それでも、とてもしあわせ……と、いうわけではありませんでした。
なにかがたりなかったのです。
ねこのくにのひとたちは、はたらくことはしっていました。
でも、たのしむことをしりませんでした。
このくにには、おんがくも、おどりもなかったのです。
 

まれびとたちのまつり  林 光(作曲家)

 『セロ弾きのゴーシュ』と『森は生きている』と、あと一つくらいこどもたちのオペラを生きているうちに(とは、まあ先方は言わなかったけれど)書いてよとこんにゃく座にせがまれて思い出したのが、この絵本。
 猫の国の住民はよく働くけれど、歌や踊りそのほか、現世の楽しみというものを知らなかった。お国のために働き、いざとなったらいのちも投げ出せと命じられていたこの前の戦争のときのぼくたちもそうだったのか。いやそれはちがう。ぼくたちはこっそりといろいろ楽しんでいたし、昔から伝わった楽しみかたがいくらもあった。
 猫の国に、そのような楽しみかたは伝わっていなかったのかしら。だとしたらそれは猫の国の成り立ちにかかわるなにかが原因なのかもしれない。そもそも、猫だけしかいない国がなぜあるのだろう、いつから、どのようにして?
 というふうに、台本作者の福田善之さんは、ウェッタシンハさんの原作をさらにさかのぼってたくさんのことを考える。そうすると、いつのまにかそれは、この世界、さまざまな人間たちが、人間以外の生き物たちと一緒にながいあいだ暮らし、愛しあったり争いでたがいに殺しあったりしてきたこの地球の今と未来について考えることになってくる。そのうちほんの少ししかオペラには出てこないがオペラの外へ糸をたぐればそれらが見えてくるにちがいない。
 
 ウエッタシンハさんの物語では、ふたりの旅人は海の向こうから舟でやってきて猫の国に歌や踊りという楽しみを与え、やがて去って行く。これはそっくり折口信夫(しのぶ)が言う「まれびと」と同じだ。(まれびと → 海のかなたの異郷から来訪して人びとに祝福を与えて去る神)
 福田さんは旅人のひとりにこう言わせている。
 
 「私どもは、歌を歌い、踊り、その楽しさを伝えるために、おそらくは、生きているのでしょう。(仲間の多くが死に絶えてしまっても、なお)生きつづけることを許されているのでしょう……もっと遠くの、もっと大勢の生きものの仲間たちに。(ただ、それだけのために)きっと。」
 
 ここには、時空を越えた、果てしない時間の流れを生きるSF風漂泊の芸能者のイメージをさえ思わせるものがある。
 ぼくたちは百万年まえの地球の様子を知る知恵を持ち、**キロ離れた星から石ころを採ってくる技術を持っているのに、せいぜい何世代かのちの子孫を原子炉廃棄物の危険から守る十分な方策を持たない。
 ひとこともそんなことを言わないで、けれども言外にそんなことも語られているようなオペラで、『ねこのくにのおきゃくさま』があってくれたらと、心から願う。

おぺら小屋 91201124日発行)から 

 

公演詳細

【山形公演】

合唱劇「オツベルと象」<管弦楽版>(合唱オペラ初演)
 
◆日時:2015年11月29日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:山形市民会館 大ホール
◆入場料:一般券 1,500円 / 学生券 1,000円 / 中学生以下無料
 
◆主催 : 合唱団じゃがいも、山形市、山形市民会館管理運営共同事業体
◆後援 : 山形県芸術文化協会、山形市芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆チケット取り扱い : 辻楽器店、富岡本店、山形プレイガイド
 

【東京公演】

◆日時:2016年1月31日(日) 14:00 開場 / 14:30 開演
◆会場:かめありリリオホール
◆入場料:一般 2,000円  学生・高校生 1,000円
 
◆チケット取り扱い所:林光事務所、
           かつしかシンフォニーヒルズ、かめありリリオホール
 
◆主催:合唱団じゃがいも
◆後援:山形県芸術文化協会、山形県合唱連盟
◆企画・制作:林光事務所
 
合唱劇「オツベルと象」 特設ページはこちら
 
 

フォトギャラリー

 
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(撮影・編集:鈴木 康弘)